コイルとコンデンサの実際の働き
マイコンのインターフェースを構成する電気回路は主に直流回路ですので抵抗を負荷としたオームの法則に従う比較的単純なものでした。ところが、交流回路となると話が変わってきます。それは回路に使われるコイルやコンデンサは流れる電気信号の周波数によってインピーダンスという直流回路でいう抵抗値が変化し、信号の電圧と電流の位相がずれる特性があるからです。
なぜコイルとコンデンサでは電流に対して電圧の位相がずれるか数式だけに頼らず物理的に考察してみます。
コイル:
コイルには流れる電流が時間変化するとそれを妨げる方向に電流や磁界を発生させる性質(電流とは反対の逆起電力が発生)があります。この作用によりコイルには電流を安定させる働きがあり、直流では一瞬電流の流れが妨げられますが落ち着くと単なる導体となります。交流では常に抵抗のように作用します。
この作用を誘導性リアクタンスXL(=ωL)とよびインダクタンスLおよび周波数ω(=2πf)に比例して大きくなります。 この性質によりコイルの場合は電圧の位相に対して電流は遅れることになり、つまり電流の位相に対して電圧の位相は進むことになります。
コンデンサ:
コンデンサは電圧がかかると、電荷(電気量)Qがたまって充電し、自身より電位の低い負荷につなぐと放電する性質があります(電流は空のコンデンサに電圧をかけた時点が最大なのに対して、電圧は空の時点が最小で充電完了時が最大)。電荷Qは 容量Cにかかる電圧Vに比例する特徴Q(t)=CV(t)があります。電流i(t)は 電荷Q(t) の時間変化 i=dQ/dt=Cdv/dtとなります。
この作用によりコンデンサには電圧の変動を吸収つまり電圧を安定させる働きがあり、直流では一瞬充電されますがそれ以上は電流を通さず、充放電を繰り返す交流電流だけ通します。
コンデンサも交流では常に抵抗のように作用し、これを容量性リアクタンスXC(=1/ωC )と呼びますが、コイルとは逆で容量Cおよび周波数に反比例して小さくなります。 この性質によりコンデンサの場合は電圧の位相に対して電流は進むことになり、つまり電圧の位相に対して電流の位相は遅れることになります。
位相がずれる作用については中学校の理科で習ったコイルとコンデンサの性質を考えるとそんなに難しくはないのですが、数式だけで説明しているものが多く、それだけで理解したつもりになっていると本質的なものを見失う可能性があります。コイル、コンデンサの理解に限らず数式だけで扱ってきたものでも理論屋でなくモノを扱うエンジニアであれば物理的な作用を一度見直して知識を整理してみると改めて気づくこともありますのでお勧めします。